レーザーフラッシュ法(Laser Flash Method)とは何か?

レーザーフラッシュ法(Laser Flash Method)は、固体材料の熱拡散率(Thermal Diffusivity)を高精度に測定する代表的な手法です。金属、セラミックス、高分子、複合材料など、幅広い材料の熱物性評価に利用されています。

本手法は、1961年に William J. Parker らによって提案された測定原理に基づいており、現在では国際規格 ASTM E1461 にも規定されています。


測定原理

レーザーフラッシュ法では、試料の一方の面に短時間のレーザーパルスを照射し、試料裏面の温度上昇を赤外線検出器で測定します。

パルス加熱後、熱は試料内部を拡散し、裏面温度が時間とともに上昇します。この温度応答曲線から、熱拡散率 α を求めます。

基本式は以下の通りです。

 α = 0.1388 × D² / t1/2 
  • α:熱拡散率(m²/s)
  • D:試料厚み(m)
  • t1/2:裏面温度が最大温度上昇の50%に達する時間、ハーフタイムと呼ばれる(s)

フラッシュ法の温度上昇曲線模式図

この式は断熱条件・瞬間加熱を仮定した理想モデルに基づきます。実際の測定では、熱損失補正モデル(Cowenモデル、Cape-Lehmanモデルなど)が適用されます。


熱伝導率との関係

レーザーフラッシュ法で直接求められるのは熱拡散率です。熱伝導率 λ は以下の関係式から算出します。

 λ = α × ρ × Cp 
  • λ:熱伝導率(W/m·K)
  • ρ:密度(kg/m³)
  • Cp:比熱容量(J/kg·K)

そのため、正確な熱伝導率を求めるためには、密度および比熱の精度も重要になります。


レーザーフラッシュ法の特長

1. 測定時間が短い

1回の測定は数ミリ秒〜数秒程度で完了します。高温域でも短時間で測定できるため、温度依存性評価に適しています。

2. 広い温度範囲

室温から1000℃以上まで測定可能な装置も存在し、高温材料評価に強みがあります。

3. 接触熱抵抗の影響が小さい

非接触加熱・非接触検出であるため、接触法に比べ界面熱抵抗の影響が小さいのが特長です。


注意点・実務上のポイント

1. 試料表面処理

レーザー吸収率および放射率を安定させるため、カーボンスプレー等で表面を黒化処理することが一般的です。

2. 熱損失補正

高温域や低熱拡散材料では、放射損失の影響が無視できません。解析モデルの選択は測定精度に直結します。

3. パルス幅の影響

理想的には瞬間加熱が仮定されますが、実際のレーザーには有限のパルス幅があります。薄膜や高拡散材料では特に注意が必要です。


他手法との比較

項目 レーザーフラッシュ法 定常法(絶対法) 定常法(比較法)
測定対象 熱拡散率 熱伝導率 熱伝導率
測定時間 短時間 長時間 中程度
高温対応
低熱伝導材料

用途に応じて最適な手法を選択することが重要です。


まとめ

レーザーフラッシュ法は、短時間かつ高精度に熱拡散率を測定できる優れた手法です。特に高温材料や金属・セラミックス分野で広く活用されています。

一方で、熱損失補正や比熱測定精度など、実務上の注意点も多く、装置性能だけでなく解析ノウハウが測定品質を左右します。

熱物性評価の目的(研究開発、品質管理、規格試験など)に応じて、最適な測定手法を選択することが重要です。

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