非定常状態とは?― 熱伝導率測定における非定常法の基礎解説
非定常状態とは
非定常状態とは、温度が時間とともに変化している状態を指します。加熱や冷却の途中段階では、試料内部の温度分布や熱流が時間依存性を持ち、このような状態が非定常状態です。これに対して、時間が十分に経過し、温度分布が変化しなくなった状態を定常状態と呼びます。
熱伝導率測定の分野では、この温度の時間変化そのものを解析に利用する手法が非定常法です。
熱伝導率測定における非定常法と非定常状態
非定常法は、試料に一時的な加熱を与え、その後の温度応答の時間変化を解析することで熱物性値を求める測定法です。測定中の試料は明確に非定常状態にあり、温度は刻々と変化しています。
代表的な非定常法には、レーザフラッシュ法、周期加熱法、ステップ加熱を用いた各種過渡応答法などがあります。いずれも、定常状態を待つ必要がなく、比較的短時間で測定できる点が特徴です。実用的には、熱拡散率を測定する定常法は、時間と長さの精度を高めれば、微小試料や薄膜の測定が可能となります。
非定常法ではなぜ熱拡散率を測定するのか
非定常法の多くでは、直接求められる物性値は熱伝導率ではなく熱拡散率です。非定常状態における温度の時間変化は熱拡散方程式によって記述され、その挙動を支配する主要なパラメータが熱拡散率であるためです。
熱拡散率は、「熱が材料内部をどれだけ速く伝わるか」を示す指標であり、非定常応答の解析に適した物性値です。
熱拡散率から熱伝導率への換算
非定常法によって得られた熱拡散率から、熱伝導率は以下の関係式を用いて算出されます。
λ = α × ρ × Cp
ここで、αは熱拡散率、ρは密度、Cpは比熱容量です。そのため、非定常法による熱伝導率評価では、熱拡散率の測定に加えて、比熱および密度の測定が必要となります。複数の物性値を組み合わせて熱伝導率を算出する点が、非定常法の大きな特徴です。
非定常加熱における代表的な時間変化パターン
パルス加熱
パルス加熱は、瞬間的に短時間のエネルギーを与える加熱方式です。レーザフラッシュ法が代表例で、加熱後の試料裏面温度の時間変化から熱拡散率を求めます。短時間測定が可能で、固体材料の評価に広く用いられています。
周期加熱
周期加熱は、加熱と冷却を一定周期で繰り返し、温度応答の振幅や位相差を解析する方式です。ノイズの影響を受けにくく、薄膜材料や多層構造、微小領域の評価に適しています。スポット周期加熱放射測温法が代表的な測定法です。
ステップ加熱
ステップ加熱は、一定の加熱量を急激に与え、その後の温度上昇過程を解析する方式です。比較的シンプルな加熱制御で実施でき、過渡応答を用いた物性評価に利用されます。ホットディスク法が代表的な測定方法です。
非定常状態を利用する測定法の特徴と注意点
非定常法には、測定時間が短い、薄膜試料や微小試料への適用が可能、定常状態を作りにくい材料にも対応できるといった利点があります。
一方で、解析モデルへの依存度が高いこと、比熱や密度の測定精度が結果に影響すること、多層材料や異方性材料では解析が複雑になることなどには注意が必要です。
まとめ
非定常状態とは、温度が時間とともに変化する状態であり、非定常法による熱伝導率測定の基礎となる概念です。非定常法では、熱拡散率を中心に物性評価を行い、比熱および密度と組み合わせることで熱伝導率を算出します。
パルス加熱、周期加熱、ステップ加熱といった加熱方式の違いを理解することで、材料特性や測定目的に応じた適切な測定法の選定が可能となります。