定常法(Steady-State Method)
熱伝導率の定義(フーリエ測)に即した最も基本的な熱伝導率測定方法。
1. 測定原理
定常法は、試料内部の温度分布が時間的に変化しない「定常状態」を作り、その状態における熱流束と温度差から熱伝導率を求める手法です。フーリエの一次元熱伝導則を直接適用できるため、解析は比較的単純であり、不確かさ評価も実務的に扱いやすい点が特長です。
基本式は次の通りです:
λ = (q · L) / ΔT
(λ:熱伝導率 [W·m⁻¹·K⁻¹]、q:熱流束 [W·m⁻²]、L:試料厚さ [m]、ΔT:温度差 [K])
2. 主な測定構成
一般的な定常法の構成要素:
- 恒温加熱板/冷却板:試料に安定した温度境界を与えるための熱源・熱シンク。
- 断熱構造:横方向の熱損失を抑制し、一次元熱流を確保。断熱材の測定では必要。熱流が多く流れる比較的熱伝導率が高い試料では不要となる。
- 熱流計(または熱流束測定部):流れる熱量を高精度に測定。熱流計はサンドイッチ構造に組み込まれることが多い。
- 温度センサ(熱電対、抵抗温度計):試料両面の温度差を正確に測定。
代表的な実装例として、JIS A1412-2やASTM D5470準拠の試料を熱流測定部で挟むサンドイッチ型評価法が挙げられます。
3. 特徴とメリット
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 測定安定性 | 定常状態での測定のためノイズ耐性が高く、再現性に優れる。 |
| 解析の明快さ | フーリエ則を直接適用でき、測定値の物理的解釈が容易。 |
| 適用範囲 | 数mm以上の厚みを持つ試料や積層構造(TIMなど)に適合。 |
4. 課題・留意点
- 定常状態確立時間:熱拡散率の低い材料では定常化に長時間を要することがあり、スループットが低下する。
- 断熱性の確保:横方向の熱損失や装置自体の放熱は誤差要因となるため、断熱設計と損失評価が重要。
- 接触熱抵抗の管理:試料と加熱/冷却板の接触状態(面圧・平面度・界面材料)により測定値が影響を受ける。
- 薄膜や超高熱伝導材料:温度差の取得が困難な場合があり、レーザーフラッシュ法(非定常法)等が優位となる。
5. 産業用途
実務上の主な適用例:
- TIM(Thermal Interface Material)評価(シート、グリース、ゲル)
- 樹脂・ゴム・複合材料・接着剤の熱特性評価
- 建材や断熱材の熱性能評価
- 電池・モジュール等の熱設計評価(材料選定・品質管理)
6. 関連用語(リンク先作成中です。しばらくお待ちください。)
熱流計法(HFM)
保護熱板法(GHP)
熱伝導率
ASTM D5470
JIS A1412-2
周期加熱法(非定常法)
最終更新:2025年11月21日
