対象:熱設計技術者・材料開発者・評価担当者
概要
サーマルインターフェースマテリアル(TIM)は、電子機器の熱設計で重要な役割を担います。TIM の熱伝導率評価に広く参照される規格が ASTM D5470 ですが、本規格は歴史的背景によりメーターバー方式を採用しており、現代では必ずしも TIM 専用に最適化されたものではないと考えています。近年は熱流センサー方式(以下 HFM)の性能が向上し、TIM 測定にも十分適用できるようになっています。本稿では、D5470 の成り立ちと課題、HFM の利点、ベテルの対応、そして将来の規格化の方向性を技術者向けに整理します。
1. ASTM D5470 の位置づけ(歴史と実務上の課題)
背景:ASTM D5470 は温度勾配を利用するメーターバー(meter-bar)方式を採用しています。制定当時は熱流センサーの感度や安定性が不十分だったため、信頼性の高い間接測定法として採用されました。これが結果的に TIM 測定のデファクトスタンダードとして広まった経緯があります。
- 試料の熱伝導率に応じてメーターバー材質を変更しないと不確かさが増す場合がある。
- 測定部が大型化しがちで定常状態までの立ち上がり時間が長く熱リークが発生しやすい。
- 圧力や温度安定化に時間を要するため高頻度試験に不向きなケースがある。
2. HFM(熱流計法)の進化と TIM 測定への適用性
HFM の利点:
- 熱流を直接測定するため、メーターバー材質に依存しない。
- 測定部の小型化・応答性向上により、測定精度を高めやすい。
- 測定ワークフローの効率化(立ち上がり時間短縮、容易な不確かさ解析)。
3. ベテルの対応
ベテルは ASTM D5470(メーターバー方式)および HFM(熱流計法)の双方による測定装置・評価ソリューションを実現しています。これにより、既存の規格要求への準拠と、新素材評価に伴う高頻度・多様試験の双方に対応可能です。
4. 技術者向け 比較表(要点)
| 項目 | ASTM D5470(メーターバー) | HFM(熱流計法) |
|---|---|---|
| 測定原理 | メーターバーの温度差から熱流を間接算出 | 熱流センサーで熱流を直接検出 |
| 歴史的経緯 | 熱流センサー性能不足を補うため採用(制定当時) | 最近のセンサー技術向上により実務適用が拡大 |
| 適合試料 | 広い範囲の熱伝導率試料に対応するためにはメーターバーの材質変更が必要な場合がある。 | 熱伝導率測定範囲が広めである、柔軟材・高導電材料・グリース等、多様なTIMに適応 |
| 測定部サイズ・応答 | 大型化しやすく定常確立まで時間を要する | コンパクトで応答が早く生産試験に向く |
| 材質依存性 | メーターバー材質を試料に合わせる必要が出る場合がある | センサー校正で多様な試料に共通で対応可能 |
| 利点(実務) | 歴史的実績、規格準拠の明瞭さ | 測定効率、設置自由度、薄膜測定で有利 |
| 課題(実務) | 高熱伝導材料や低熱伝導材料の測定で感度不足や誤差の懸念 | 規格上の普及度が低い場合、評価結果の受け入れ課題 |
5. 規格化の提案:D5470 と HFM を包含する TIM 専用規格の必要性
現状、ASTM D5470 は TIM 測定の参照規格として広く参照されていますが、測定装置・センサー技術が進化した現代においては、D5470 の思想を維持しつつ、HFM を公式に取り込んだ新たな TIM 専用規格を策定する意義が大きいと考えます。主な要件例は次の通りです。
- 試料形状(薄膜、パッド、グリース、ゲル等)ごとの測定プロトコル整備
- 圧縮率・接触抵抗を含む実使用条件下の評価指針、特に測定可能な試料温度(温度差を含む)を明確化すべき
- メーターバー方式と HFM 方式それぞれの校正・不確かさ評価方法の標準化
- 測定結果の報告フォーマット統一(温度、圧力、厚み、測定面積など)
6. 技術者への実務的アドバイス(測定法選定チェックリスト)
- 試料の熱伝導率レンジ(概算)を確認する:高導電(>1 W/mK)か低導電(<0.5 W/mK)か。
- 試料厚みを確認:薄膜(<1 mm)か中厚(1–10 mm)か。
- 圧縮性・接触状態の有無を確認:パッドやグリースかどうか。
- 既存規格準拠要件の有無:顧客や契約で D5470 指示があるか。
- 試験頻度と設備設置条件:高頻度評価なら HFM の採用を優先検討。
7. まとめ(結論)
ASTM D5470 は TIM 測定の参照規格として重要な位置を占めていますが、規格の成り立ちと現代の測定技術の進化を踏まえると、HFM(熱流計法)を正式に包含する新規格の策定が望まれる状況です。ベテルはメーターバー方式と HFM 両方の実装が可能であり、既存業務・研究開発の双方に柔軟に対応できます。
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