CPUの性能向上とともに、発熱量は年々増加しています。 その熱を効率的に放出するための重要な要素のひとつが「CPUグリス」です。 グリスの性能を判断する指標として「熱伝導率(W/mK)」がよく用いられますが、 実際の放熱性能は単純に数値の大小だけでは決まりません。 本記事では、熱伝導率の意味と、放熱性能との関係について解説します。
CPUグリスの役割と熱伝導率
CPUグリスは、CPU表面とヒートシンクの間に塗布される熱伝導材料(TIM:Thermal Interface Material)です。 その主な役割は、金属面の微細な凹凸を埋め、熱の伝達経路を確保することです。 熱伝導率(Thermal Conductivity)は、熱をどれだけ伝えやすいかを示す物性値で、単位は W/m·K で表されます。
一般的なCPUグリスの熱伝導率
| グリスの種類 | 主成分 | 熱伝導率(W/m·K) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| シリコーン系 | 酸化アルミ、酸化亜鉛 | 1〜5 | 安価で扱いやすい。一般的なPCに最適。 |
| 金属粉入り | 銀、銅、アルミ | 5〜12 | 高い熱伝導率。ゲーミングPCやOC用途に適する。 |
| カーボン系 | グラファイト、カーボンナノチューブ | 8〜20 | 高耐久・非導電性で安全。高負荷環境に強い。 |
| 液体金属系 | ガリウム合金 | 30〜70 | 非常に高い熱伝導率。ただし取り扱いに注意。 |
熱伝導率が高いほど放熱性能は良い?
一見すると、熱伝導率が高いグリスほど放熱性能が良さそうに思えますが、実際は必ずしもそうではありません。 放熱性能は、グリス自体の特性に加えて、以下の要素にも大きく左右されます。
1. 塗布厚さと均一性
グリスが厚すぎると、かえって熱抵抗が増加します。 理想的な厚さは数十μm程度で、塗布ムラが少ないことが重要です。 熱伝導率が高くても、塗布状態が悪いと実際の放熱効率は低下します。高熱伝導のグリスは硬くて使いにくいというお話もお聞きします。
2. 界面熱抵抗(Contact Resistance)
CPUとヒートシンクの間には「界面熱抵抗」が存在します。 これは、グリスの密着性や硬化性、表面粗さの影響を受けるもので、 理論上の熱伝導率よりも現実の熱移動を制限する要因となります。
3. 長期安定性とポンプアウト現象
CPUの熱サイクルにより、グリスがポンプアウト(押し出される)すると、 接触面が減少し、放熱性能が急激に低下します。 熱伝導率だけでなく、長期安定性や粘度特性も評価すべき重要な指標です。サーマルパッドのほうが良い場合もあり得ます。
実用的な選定のポイント
CPUグリスを選ぶ際は、単に熱伝導率の数値だけでなく、 「用途」「使用環境」「メンテナンス頻度」を考慮することが重要です。
- 一般的なデスクトップPC → シリコーン系(1〜5 W/mK)で十分
- ゲーミング/高発熱CPU → 金属粉入り(5〜12 W/mK)
- 静音・長期使用重視 → カーボン系(非導電性・高安定性)
- 極限の冷却性能 → 液体金属系(ただし絶縁対策が必要)
まとめ
CPUグリスの熱伝導率は、放熱性能を判断するうえでの重要な目安ですが、
実際の冷却効果は「界面の状態」「塗布技術」「長期安定性」にも左右されます。
用途に応じて適切なグリスを選定することで、CPUの性能を最大限に発揮させることができます。
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