5G通信、EV(電気自動車)、データセンターの高性能化に伴い、電子部品の発熱密度は年々増加しています。この「熱」をいかに効率よく逃がすかが、製品の性能と信頼性を左右する最大の課題です。
その鍵を握るのが、材料の「熱伝導率(Thermal Conductivity)」です。
本記事では、熱測定の専門ブログとして、2025年の最新データに基づき「熱伝導率が高い材料」をランキング形式で徹底解説します。単なる金属の比較だけでなく、究極の炭素材料、実用的なセラミックス、そして注目の新素材まで、その特性と主な用途を掘り下げていきます。
そもそも熱伝導率とは?(基礎のおさらい)
熱伝導率(単位: W/mK)とは、「物質がいかに熱を伝えやすいか」を示す指標です。
熱を運ぶもの(キャリア)は、材料によって異なります。
- 金属の場合: 主に自由電子が熱を運びます。このため、電気をよく通す金属は、熱もよく通す傾向があります(ヴィーデマン・フランツの法則)。
- セラミックス(絶縁体)の場合: 主に格子振動(フォノン)が熱を運びます。結晶の構造が整っており、純度が高いほど熱が伝わりやすくなります。
【2025年版】熱伝導率が高い材料 総合ランキング
ここでは、理論値や実験室レベルの数値も含めた「究極のランキング」を紹介します。その後に、実用的な分類(金属・セラミックス)で詳しく見ていきましょう。
熱伝導率(W/mK)ランキング TOP10
| 順位 | 材料名 | 熱伝導率 (W/mK) [代表値] | 材料分類 | 主な特徴・用途 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | グラフェン (Graphene) | 3000~5300 | 炭素材料 | 2次元材料。理論値は最高。薄膜、放熱シート。 |
| 2 | ダイヤモンド (Diamond) | 2000~2200 | 炭素材料 | 最も硬く、熱伝導率も最高クラス。研磨材、ヒートスプレッダ。 |
| 3 | カーボンナノチューブ (CNT) | 1500~3000 | 炭素材料 | 構造による。フィラー材料、複合材料。 |
| 4 | [注目] ヒ化ホウ素 (BAs) | 1200~1300 | 新素材 | 近年発見された新素材。半導体でありながら高熱伝導。 |
| 5 | 銀 (Silver) | 429 | 金属 | 金属の中で最高。高価。導電ペースト、接点。 |
| 6 | 銅 (Copper) | 401 | 金属 | バランスに優れる。ヒートシンク、配線、ヒートパイプ。 |
| 7 | 金 (Gold) | 318 | 金属 | 安定性が高い。ワイヤボンディング、電極。 |
| 8 | 窒化アルミニウム (AlN) | 170~280 | セラミックス | 高熱伝導な絶縁体。パワーモジュール基板。 |
| 9 | 炭化ケイ素 (SiC) | 120~270 | セラミックス | 次世代パワー半導体材料。基板、放熱部品。 |
| 10 | アルミニウム (Aluminum) | 237 | 金属 | 軽量で安価。ヒートシンク、筐体。 |
【補足】ランキングの注意点
上記の熱伝導率はあくまで代表値であり、純度、結晶性、製造プロセス、測定温度によって値は大きく変動します。
特にグラフェンやCNTは、理論値と、樹脂などに混ぜた実用的な複合材料の値との間に大きな差があるため注意が必要です。
ヒ化ホウ素はサーマンも調べてみるまで知りませんでした。
カテゴリ別:実用的な高熱伝導材料
総合ランキングには「高価すぎる」「まだ量産が難しい」材料も含まれます。ここでは、実用的な「金属」と「セラミックス(絶縁材料)」に分けて深掘りします。
4-1. 金属(Metal)部門
熱を伝えやすく、加工もしやすい材料群です。
1位:銀 (Ag) : 429 W/mK
- メリット:金属No.1の熱伝導率と電気伝導率。
- デメリット:高コスト、硫化による変色(マイグレーション)。
- 主な用途:高周波導体、導電・放熱ペースト、接点材料。
2位:銅 (Cu) : 401 W/mK
- メリット:コストと性能のバランスが最も優れています。実用的にはこちらが1位かも。
- デメリット:銀より重く、酸化しやすい。
- 主な用途:ヒートシンク、ヒートパイプ、電子機器の配線、基板。
3位:アルミニウム (Al) : 237 W/mK
- メリット:軽量(銅の約1/3)、安価、加工しやすい。
- デメリット:熱伝導率は銅に劣る。
- 主な用途:大型ヒートシンク、電子機器の筐体(放熱を兼ねる)。
4-2. セラミックス(Ceramics)部門
「電気は通さないが、熱はよく通す」材料群です。特にパワーデバイスの絶縁基板として不可欠です。
1位:窒化アルミニウム (AlN) : 170~280 W/mK
- メリット:高い熱伝導率と高い絶縁性。シリコンと熱膨張係数が近い。
- デメリット:アルミナより高価。
- 主な用途:IGBTなどのパワーモジュール用絶縁基板、LED用基板。
2位:炭化ケイ素 (SiC) : 120~270 W/mK
- メリット:高熱伝導、高硬度、耐熱性。
- デメリット:製造コスト。
- 主な用途:SiCパワー半導体ウェハ、高温用ヒーター、耐摩耗部品。
(比較)アルミナ (Al2O3) : 20~30 W/mK
- 最も一般的で安価なセラミックス基板です。上記2つの材料(AlNやSiC)がいかに高い熱伝導率を持つかが分かります。絶縁耐圧や強度も考えた場合は、ちょっと変わってきますね。
【2025年の視点】注目の新素材と技術動向
"2025年版"として、最新のトピックにも触れておきましょう。
究極の半導体「ヒ化ホウ素 (BAs)」
2018年頃から注目され、近年研究が進む新素材です。半導体(絶縁体に近い)でありながら、ダイヤモンドに次ぐ1300 W/mKという驚異的な熱伝導率を持つことが報告されています。電子(正孔)もフォノンも効率よく動けるためとされ、次世代デバイスの基板材料として期待されています。
ダイヤモンド(CVDダイヤモンド)の実用化
人工的にダイヤモンド膜を生成(CVD法)し、GaNデバイスなどの局所的な高発熱部(ホットスポット)直下に配置する技術が実用化フェーズに入っています。
複合材料(コンポジット)の進化
樹脂(低熱伝導)に、CNT、グラフェン、窒化ホウ素(BN)などの高熱伝導フィラー(充填材)を混ぜ込んだTIM(サーマルインターフェースマテリアル)の高性能化が引き続き進んでいます。
まとめ
今回の内容をまとめます。
- 熱伝導率の「絶対王者」はグラフェンやダイヤモンドといった炭素材料。
- 実用的な金属では「銀」「銅」が、絶縁材料では「窒化アルミニウム(AlN)」が主流。
- 材料選定では、熱伝導率だけでなく、コスト、加工性、絶縁性、熱膨張率などを総合的に比較することが重要。
- 今後は「ヒ化ホウ素」のような新素材や、ダイヤモンドの実用化が熱問題解決の鍵となる可能性が高い。
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