以前、松尾産業様、DIAM様からご提供いただきました、導電性ダイヤモンドの熱伝導率測定を行いましたが(リンク:https://blog.thermal-measurement.info/archives/52278843.html)、
今回はノンドープのダイヤモンドを測定しました。通常ノンドープのダイヤモンドのほうが綺麗な結晶となりますので、熱伝導率が高くなることが期待できます。
松尾産業株式会社様技術紹介ページ
DIAM株式会社様ホームページ
測定はサーモウェーブアナライザTA35で行います。
【試料について】
今回は試料を2種類お預かりしました。厚みは大変薄く、測定が困難でしたので計測していません。サーモウェーブアナライザで試料の面内方向を測定する場合、試料の厚みが計測できなくても、試料の厚みが十分薄い場合は問題になりません(試料により異なりますので、厚みが測定できない場合はお問い合わせください。)。試料が割れやすく、試料形状は不定形となっています。普通の熱伝導率測定装置ではほぼ測定は不可能と言えます。サーモウェーブアナライザのみで測定可能です。

試料1

試料2


試料1

試料2
どちらの試料も半透明です。レーザー光の透過の影響が考えられますので、表面にモリブデンのスパッタリングを施してあります。
【熱拡散率測定】
どちらの試料も薄いため、カーボンスプレーによる黒化をしなくても熱拡散率は測定できました。(薄くカーボンスプレーを塗布したほうが、S/N比の高い信号が得られたかもしれませんが問題無く測定はできました。)
なお、サーモウェーブアナライザで得られる物性値は熱拡散率です(試料が小さく熱伝導率も良い材料は、熱伝導率が直接測定できません。)。熱拡散率は比熱と密度から熱伝導率に換算することが可能です。
今回の試料も、レーザーを照射した影響で試料温度が上昇すると、熱伝導率が変化する可能性があるため、室温付近の熱伝導率を評価するために、レーザーの強度を変えつつ測定を行い、横軸にレーザー強度、縦軸に熱拡散率をプロットして、レーザー強度ゼロで外挿することにより、レーザーの温度上昇による影響を除いた熱拡散率を求めています。
【測定結果】
試料1 薄膜ダイヤモンド
熱拡散率:215×10-6m2s-1
熱伝導率:392W/mK
(比熱と密度の文献値から計算)
試料2 薄膜ダイヤモンド
熱拡散率:197×10-6m2s-1
熱伝導率:360W/mK
(比熱と密度の文献値から計算)
熱伝導率の比較

得られた熱伝導率は、前回測定した導電性ダイヤモンドよりも高く、金属のなかでも熱伝導率の高い銅の熱伝導率に近い物でした。ダイヤモンドはさらに高い熱伝導率を持つ場合も多いのですが、今回は非常に薄いということで、結晶成長の初期のダイヤモンドが多く含まれていたので、控えめな熱伝導率となったのではないかと考えられます。一般的に、結晶成長初期は結晶の欠陥が多く含まれるため、熱伝導率も低くなりがちです。
また、今回の測定では、非常に薄い試料にもかかわらず、サーモウェーブアナライザを用いることで熱伝導率が測定できました。
熱伝導率測定のお問い合わせは株式会社ベテルまでご連絡ください。お客様の用途や材料に合った測定方法をご提案します。ご連絡はこちら(リンク:https://hrd-thermal.jp/contact/)までどうぞ。
【参考:金属の熱伝導率】
銅 401W/mK
アルミニウム 237W/mK
マグネシウム 156W/mK
鉄 80W/mK