今回は、導電性ダイヤモンドの熱伝導率測定を行いました。本来ダイヤモンドは絶縁体ですが、ホウ素をドープすることで導電性を付与して、高性能な電極とすることが可能です。広い電位窓による他材質の電極では不可能な酸化還元反応が可能、強酸強アルカリ環境などの厳しい環境でも使えるなど非常にメリットが大きいようです。個人的にはCFRPのリサイクルに使えることに注目しています。

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測定はサーモウェーブアナライザTA35で行います。

【試料について】
今回の試料は厚みが30μmと300μmで、試料サイズが10mm×10mmということで、普通の熱伝導率測定装置ではほぼ測定は不可能と言えます。サーモウェーブアナライザのみで測定可能です。
t30試料写真
厚み30μm試料

t300試料
厚み300μm試料

厚み30μm試料は艶消しの黒で表面はなめらかです。厚み300μm試料も艶消しの黒ですが、表面は若干ざらついていました。なお、この程度のざらつきは測定には全く影響ありません。

【熱拡散率測定】
どちらの試料も黒く、カーボンスプレーによる黒化は不要です。因みにカーボンスプレーは表面にレーザー光を吸収させて、裏面からの赤外線放射を高めるために塗布します。

また、サーモウェーブアナライザで得られる物性値は熱拡散率です(試料が小さく熱伝導率も良い材料は、熱伝導率が直接測定できません。)。熱拡散率は比熱と密度から熱伝導率に換算することが可能です。

炭素系の材料は、温度依存性が大きく、レーザーを照射した際の熱の影響で試料温度が上昇すると、熱伝導率が変化します。今回は、室温付近の熱伝導率を測定したいので、レーザーの強度を変えつつ測定を行い、横軸にレーザー強度、縦軸に熱拡散率をプロットして、レーザー強度ゼロで外挿することにより、レーザーの温度上昇による影響を除いた熱拡散率を求めます。

t30μmダイヤモンドの熱拡散率


t300μmダイヤモンドの熱拡散率
 
【測定結果】
t=30μm導電性ダイヤモンド
熱拡散率:78.2×10-6m2s-1
熱伝導率:143W/mK
(比熱と密度の文献値から計算)

t=300μm導電性ダイヤモンド
熱拡散率:122.2×10-6m2s-1
熱伝導率:223W/mK
(比熱と密度の文献値から計算)

得られた熱伝導率は、金属の熱伝導率に近い物でした。材料としての熱伝導率は比較的高く、放熱が必要な部材としても金属と同程度の放熱性が期待できるのではないかと思います。材料の熱伝導率を把握することで、様々な環境で使用するための基礎データが得られます。特に今回は小さくて薄い試料ですので、熱伝導率を把握することは簡単ではありませんが、サーモウェーブアナライザを用いることで正確な熱伝導率を非破壊で測定できました。

熱伝導率の測定のお問い合わせは株式会社ベテルまでご連絡ください。お客様の用途や材料に合った測定方法をご提案します。ご連絡はこちら(リンク:https://hrd-thermal.jp/contact/)までどうぞ。

【参考:金属の熱伝導率】
銅                             401W/mK
アルミニウム      237W/mK
マグネシウム      156W/mK
鉄                              80W/mK