脱炭素の観点から、自動車の電動化や空調給湯設備のインバーター制御化が重要になっています。その電力制御に欠かせないのがパワーデバイスですが、大電流を扱うため、放熱設計がますます重要になっています。放熱設計の為には、各部の熱伝導率を知ることが重要ですが、パワーデバイス自体(シリコン、シリコンカーバイド、窒化ガリウム、ダイヤモンド等)や放熱部材(アルミナ、窒化アルミニウム、ガラスエポキシ、各種TIM、銅、アルミニウム、封止材、ダイアタッチ材等)の物性も重要です。たくさんありすぎて挙げるのが大変です。
今回は、シリコンカーバイドとシリコンの熱伝導率を調べてみましょう。
【測定事例】 シリコンカーバイド(SiC)の熱伝導率
10年くらい前から弊社にはSiCの測定依頼がありましたが、最近では一般化しつつあり、様々な分野で使われ始めています。特に脱炭素の流れの中でいろいろな製品が電動化及び効率化されることで、使用頻度が高くなっています。熱伝導率は、およそ100~350[W/m・K]です。
パワーデバイス半導体としては、今まさにたくさんの期待と注目が寄せられています。シリコンよりも使用できる温度が高いため、温度が高い場合の熱伝導率測定も必要となっています。
今回の測定事例紹介は6H-SiCです。当社のサーモウエーブアナライザTA33/35で測定しますと、
熱伝導率(当社で独自に入手した試料の平均的な測定値をご紹介しています)
約350W/mK
*熱伝導率は熱拡散率の測定値と比熱と密度の文献値から計算。
これ以外にも結晶構造の違う4H-SiC、6H-SiC、多結晶のサーマルマイクロスコープによる測定事例があります。カタログの【事例3】をご覧ください。https://hrd-thermal.jp/apparatus/tm3.htmlの下段からダウンロードしてください。
【測定事例】 5種のシリコンウェハの熱伝導率の違い
一方で汎用的な用途ではいまだにパワー半導体にはかかせないシリコンウェハの測定事例の紹介です。弊社で入手したシリコンウェーハ(5種)の測定を紹介します。
測定したのは下記の5種類。それぞれp型/n型、ドープ量などが違うものです。
①ケイ素<0.02Ωcm/P,Low,100
②ケイ素>1000Ωcm/P,High,111
③ケイ素<0.02Ωcm/N,Low,100
④ケイ素<0.02Ωcm/N,Low,111
⑤ケイ素>1000Ωcm/N,High,111
当社のサーモウエーブアナライザTA33/35で測定しますと、
熱伝導率(熱拡散率)
①ケイ素<0.02Ωcm/P,Low,100 約120W/mK(74mm2/s)
②ケイ素>1000Ωcm/P,High,111 約140W/mK(87mm2/s)
③ケイ素<0.02Ωcm/N,Low,100 約120W/mK(76mm2/s)
④ケイ素<0.02Ωcm/N,Low,111 約120W/mK(75mm2/s)
⑤ケイ素>1000Ωcm/N,High,111 約140W/mK(87mm2/s)
*熱伝導率は熱拡散率の測定値と比熱と密度の文献値から計算。
という結果です。
熱伝導率的には、p型/n型でそう大きな差はないようです。High、lowでは差が出るようです。
当社のサーモウエーブアナライザTA33/35は、
熱伝導率の低い材料から高い材料迄、異方性がある材料でも同一ワークで測定でき、マッピング機能も搭載した装置です。
測定依頼は、株式会社ベテル、お問い合わせフォームまでご連絡ください。
今回の記事は、下記の記事を編集して再録したものです。