こんにちは。
サーモマンです。

本日は、炭素繊維強化プラスチック(以下、CFRP)の熱伝導パスを
赤外カメラで観察します。

炭素繊維強化プラスチック

CFRPは複合材料の一種ですが、
軽量で強度の高いという特徴を持ち、
航空機や自動車等に使われ始めている材料です。

ご存知のとおり、炭素繊維と樹脂の複合材料ですね。
炭素繊維や複合材料は日本発の技術ですので、
今後もどんどん発展していってほしいものです。

軽くて丈夫ということは比強度が高いということです。
比強度が高い金属といえば、チタンやジュラルミンが思い浮かびます。
CFRPは、それらよりもさらに比強度が高いのです。

比強度とは・・・
物質の強さを表す物理量のひとつで、密度あたり引っ張り強さである。
つまり「引っ張り強さ ÷ 密度」で得られる。比強度が大きいほど、軽いわりに強い材料である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%94%E5%BC%B7%E5%BA%A6(wiki)


CFRPの熱伝導率はと言うと・・・

■元素の側面から考えると・・・
炭素は形態によって大きく熱伝導率が変わる材料です。
熱伝導率の温度依存性も大きいです。

■複合材料の側面から考えると・・・
材料の面に沿った方向に、炭素繊維が並んでいますので、
面に沿った方向は熱伝導率が高く、面と直角方向は熱伝導率が低くなります。

というわけで、
CFRPは、熱的性質を知りたいけれど、熱伝導率測定が難しい材料と言えるでしょう。



さて今回は、CFRPをレーザで加熱して熱伝導率パスの観察をおこないました。
その際、変調周波数を変えて観察しました。
変調周波数を変えると、熱の伝わり方はどのように変わるのでしょうか?

※観察には、サーマルイメージングスコープTSIを使用しました。
http://www.bethel-thermal.jp/specification/03/index.html


レーザを周期変調して試料(この場合はCFRP)に当てると、
試料表面で温度波が発生します。

温度波は、減衰しながら試料内を伝わっていきます。
※熱は拡散して伝わりますから、温度波は概念的なものと考えてください。

周波数が高くなると、温度波の減衰量が大きくなります。
つまり、周波数が高くなるほど、熱が伝播する距離が短くなります。
この距離を、熱拡散長といいます。


CFRPの断面図と熱拡散長


熱拡散長の説明



今回評価したCFRPは、
板状で、縦と横に炭素繊維が編みこまれています。
全体的に見ると、縦方向と横方向の熱の伝わりは同じになります。


炭素繊維強化プラスチック_観察位置


表面だけを見ると、
縦方向のみ或いは横方向のみの炭素繊維が現れています。

この試料にレーザを当てて、
赤外線カメラで観察するとどう見えるでしょうか?



まずは、0.1Hzで観察。

炭素繊維強化プラスチックの熱伝導観察_0.1Hzの場合


熱の広がりが大きく、
縦方向と横方向で、同じように熱が広がっていくのが分かります。

ややひし形に見えるのは、
縦方向と横方向の中間である45度方向では、
繊維に対しても45度方向で熱が伝わっていくからです。
※一般的には繊維に沿った方向の熱伝導率が最も高くなります。



次に、5.0Hzで観察をおこないます。

炭素繊維強化プラスチックの熱伝導観察_5Hzの場合




熱の広がりは小さくなるとともに、
表層の繊維方向に合わせて、熱の広がりが変化します。

温度波の広がりが小さいので、表層の状態が強く反映されているのです。


◇ - ◇ - ◇ - ◇ - ◇


周波数によって熱の広がる距離が変わることと、
それに伴って熱の影響が与えられる深さが変わることが、わかりましたでしょうか?


今回、熱移動の観察をすることで、試料の状態を観察できることを示しました。
この結果は、熱伝播を観察することによって、
試料の異常や欠陥の評価が可能であることを示唆しており、
たいへん有用な技術といえます。


(著:サーモマン)