こんにちは。テツです。
まだまだ寒い日が続いていますが、いかがお過ごしですか。
毎朝布団の誘惑と戦っています。
さて、今回は以前にも測定した表面処理の参考にする標準サンプル(JIDAスタンダードサンプルズ)の中から、
5点選んで、熱拡散率測定をおこないました。

以前書いたブログ記事
「熱拡散率測定において、試料の表面粗さと黒化膜が放射率に与える影響」では、
銅の表面粗さが熱拡散率測定におよぼす影響を調べましたが、
今回は、「金属部品に施される一般的な表面処理方法が熱拡散率測定におよぼす影響」
にスポットを当ててみました。
測定した試料は5種。
1)無処理 JANB-01
前処理をせずにアルマイト処理したもの

2)化学研磨 JACP-01 (リン酸・硝酸系薬品使用)
顔が認識できる程度の鏡面

3)化学梨地 JACM-03 (リン酸・硫酸系薬品使用)
梨地の模様ははっきりしているが、表面は滑らか

4)ブラスト処理 JAAB-04G (ガラスビーズ#60)
表面はざらざら

<参考> ブラスト処理とは・・・
表面に研磨剤を吹き付けて凹凸をつける処理。
研磨剤の粒子の大きさや吹き付ける時間・強さで粗さが変わり、研磨材の材質によっても違いが生じる。
上画像の試料は、ガラスビーズを使用したもの。
5)バイブレーション・ヘア JASL-02
表面はざらざらしているが光沢あり。

<参考> バイブレーション・ヘア処理とは・・・
ブラシや材料に回転や往復運動を加えて細かくランダムな模様をつける方法。
各試料とも、表面処理後にアルマイト処理をおこなった試料です。
これを黒化前と黒化後の2回、熱拡散率測定をしました。
※黒化処理にはグラファイトスプレーを使用しました。
測定条件を決め、いざ測定!
※ 加熱面が粘着層になっているため、検出面の違いによる出力値の変化をみるもので、測定値は参照値です。ご了承ください。
※ 振幅は周波数8.1Hz、距離1mmでの出力値になります。
1) まず無処理の試料を測定。

黒化後の試料は、当然ですが十分な信号振幅が得られました。
黒化前の試料でも、測定できる程度の振幅は得られました。
◆黒化後:振幅は 11.1 [mV]、熱拡散率は 89.0 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 8.4 [mV]、熱拡散率は 87.4 [×10-6m2s-1]
2) 次に化学研磨した試料を測定。

黒化後の試料は、無処理の試料と同程度の振幅が得られました。
黒化前の試料では、予想していたほどではありませんが、振幅は低下しました。
熱拡散率の値にも影響しているようです。
◆黒化後:振幅は 11.3 [mV]、熱拡散率は 89.8 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 6.8 [mV]、熱拡散率は 92.8 [×10-6m2s-1]
3) 次に梨地処理の試料を測定。

黒化後、黒化前の両試料とも、無処理の試料より振幅が増加しています。
◆黒化後:振幅は 15.1 [mV]、熱拡散率は 87.0 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 11.8 [mV]、熱拡散率は 87.2 [×10-6m2s-1]
4) 次にブラスト処理の試料を測定。

黒化後、黒化前の両試料とも、無処理の試料より振幅が増加しています。
今回測定した試料の中では最大となりました。
◆黒化後:振幅は 19.3 [mV]、熱拡散率は 87.1 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 13.6 [mV]、熱拡散率は 89.7 [×10-6m2s-1]
5) 最後にバイブレーションヘア処理の試料を測定。

黒化後、黒化前の両試料ともに、無処理の試料と同程度の振幅となりました。
◆黒化後:振幅は 12.3 [mV]、熱拡散率は 90.0 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 8.7 [mV]、熱拡散率は 90.2 [×10-6m2s-1]
測定結果をまとめると・・・
※熱拡散率は参考値です。
5試料の中で一番鏡面の出ている「化学研磨」の試料では
黒化前と黒化後とで、振幅に39.8%もの違いが出てしまいました。
やはり、鏡面の試料は黒化が必要だということが分かります。
「化学梨地」と「ブラスト」は、見た目は同じように見えますが、
実際に触ってみると、梨地処理はほとんど凹凸がなく、ブラスト処理のほうは凹凸がはっきりわかります。
この影響が振幅にそのまま出てきました。
バイブレーション・ヘア処理は凹凸があり、もう少し振幅が増加すると予想していましたが、
実際にはあまり上がりませんでした。
凹凸はありますが、金属光沢もあり、放射率は低くなっているようです。
以上、金属の表面処理の違いが熱物性測定にあたえる影響を検証しました。
今後もいろいろな試料を測定したいと思っております。
測定して欲しい試料のご要望などがありましたら、テツまでお声かけください。
インフルエンザがいまだ猛威を振るっているようです。
手洗い・うがいをしっかりして、健康体で寒い冬を乗り切りましょう。
(著:テツ)
まだまだ寒い日が続いていますが、いかがお過ごしですか。
毎朝布団の誘惑と戦っています。
さて、今回は以前にも測定した表面処理の参考にする標準サンプル(JIDAスタンダードサンプルズ)の中から、
5点選んで、熱拡散率測定をおこないました。

以前書いたブログ記事
「熱拡散率測定において、試料の表面粗さと黒化膜が放射率に与える影響」では、
銅の表面粗さが熱拡散率測定におよぼす影響を調べましたが、
今回は、「金属部品に施される一般的な表面処理方法が熱拡散率測定におよぼす影響」
にスポットを当ててみました。
測定した試料は5種。
1)無処理 JANB-01
前処理をせずにアルマイト処理したもの

2)化学研磨 JACP-01 (リン酸・硝酸系薬品使用)
顔が認識できる程度の鏡面

3)化学梨地 JACM-03 (リン酸・硫酸系薬品使用)
梨地の模様ははっきりしているが、表面は滑らか

4)ブラスト処理 JAAB-04G (ガラスビーズ#60)
表面はざらざら

<参考> ブラスト処理とは・・・
表面に研磨剤を吹き付けて凹凸をつける処理。
研磨剤の粒子の大きさや吹き付ける時間・強さで粗さが変わり、研磨材の材質によっても違いが生じる。
上画像の試料は、ガラスビーズを使用したもの。
5)バイブレーション・ヘア JASL-02
表面はざらざらしているが光沢あり。

<参考> バイブレーション・ヘア処理とは・・・
ブラシや材料に回転や往復運動を加えて細かくランダムな模様をつける方法。
各試料とも、表面処理後にアルマイト処理をおこなった試料です。
これを黒化前と黒化後の2回、熱拡散率測定をしました。
※黒化処理にはグラファイトスプレーを使用しました。
測定条件を決め、いざ測定!
※ 加熱面が粘着層になっているため、検出面の違いによる出力値の変化をみるもので、測定値は参照値です。ご了承ください。
※ 振幅は周波数8.1Hz、距離1mmでの出力値になります。
1) まず無処理の試料を測定。

黒化後の試料は、当然ですが十分な信号振幅が得られました。
黒化前の試料でも、測定できる程度の振幅は得られました。
◆黒化後:振幅は 11.1 [mV]、熱拡散率は 89.0 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 8.4 [mV]、熱拡散率は 87.4 [×10-6m2s-1]
2) 次に化学研磨した試料を測定。

黒化後の試料は、無処理の試料と同程度の振幅が得られました。
黒化前の試料では、予想していたほどではありませんが、振幅は低下しました。
熱拡散率の値にも影響しているようです。
◆黒化後:振幅は 11.3 [mV]、熱拡散率は 89.8 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 6.8 [mV]、熱拡散率は 92.8 [×10-6m2s-1]
3) 次に梨地処理の試料を測定。

黒化後、黒化前の両試料とも、無処理の試料より振幅が増加しています。
◆黒化後:振幅は 15.1 [mV]、熱拡散率は 87.0 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 11.8 [mV]、熱拡散率は 87.2 [×10-6m2s-1]
4) 次にブラスト処理の試料を測定。

黒化後、黒化前の両試料とも、無処理の試料より振幅が増加しています。
今回測定した試料の中では最大となりました。
◆黒化後:振幅は 19.3 [mV]、熱拡散率は 87.1 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 13.6 [mV]、熱拡散率は 89.7 [×10-6m2s-1]
5) 最後にバイブレーションヘア処理の試料を測定。

黒化後、黒化前の両試料ともに、無処理の試料と同程度の振幅となりました。
◆黒化後:振幅は 12.3 [mV]、熱拡散率は 90.0 [×10-6m2s-1]
◆黒化前:振幅は 8.7 [mV]、熱拡散率は 90.2 [×10-6m2s-1]
測定結果をまとめると・・・
表面処理 | 振幅 [mV] | 熱拡散率 [×10-6m2s-1] | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
黒化前 | 黒化後 | 差異 [%] | 黒化前 | 黒化後 | 差異 [%] | |
1) 無処理 | 8.4 | 11.1 | 24.3 | 87.4 | 89.0 | 1.8 |
2) 化学研磨 | 6.8 | 11.3 | 39.8 | 92.8 | 89.8 | ▲3.3 |
3) 化学梨地 | 11.8 | 15.1 | 21.9 | 87.2 | 87.0 | ▲0.2 |
4) ブラスト | 13.6 | 19.3 | 29.5 | 89.7 | 87.1 | ▲3.0 |
5) バイブレーション・ヘア | 8.7 | 12.3 | 29.3 | 90.2 | 90.0 | ▲0.2 |
5試料の中で一番鏡面の出ている「化学研磨」の試料では
黒化前と黒化後とで、振幅に39.8%もの違いが出てしまいました。
やはり、鏡面の試料は黒化が必要だということが分かります。
「化学梨地」と「ブラスト」は、見た目は同じように見えますが、
実際に触ってみると、梨地処理はほとんど凹凸がなく、ブラスト処理のほうは凹凸がはっきりわかります。
この影響が振幅にそのまま出てきました。
バイブレーション・ヘア処理は凹凸があり、もう少し振幅が増加すると予想していましたが、
実際にはあまり上がりませんでした。
凹凸はありますが、金属光沢もあり、放射率は低くなっているようです。
以上、金属の表面処理の違いが熱物性測定にあたえる影響を検証しました。
今後もいろいろな試料を測定したいと思っております。
測定して欲しい試料のご要望などがありましたら、テツまでお声かけください。
インフルエンザがいまだ猛威を振るっているようです。
手洗い・うがいをしっかりして、健康体で寒い冬を乗り切りましょう。
(著:テツ)