熱物性測定装置の製造、熱物性測定、ソフト開発を担当している「カトちゃん」です。

前回ブログを担当した「アワノッチ」と同じく、ブログを書くことになりました。
今後はたびたび登場させていただきます。よろしくお願いします。


ベテルの熱物性測定装置シリーズの1つである『サーモウェーブアナライザ TA3 』は、
熱拡散率を測定する装置です。

一般的に普及している「レーザーフラッシュ法」の装置と異なり、
『狙った箇所を、ピンポイント(局所)で測定できる』
ということが、サーモウェーブアナライザTA3の大きな特長です。

この特長のおかげで、面内・厚さ方向の各々の熱拡散率を、
試料形状の制約を受けることなく、しかも同一試料・同一ワークで測定できるわけです。

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では、どのくらい「ピンポイント」で測定できるのか!?
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「何マイクロ間隔で測定出来ます!」と言われても、正直ピンとこないと思います。
実際に目で見た方がずっとわかりやすいと思うので、
視覚的に確認できるように実験してみましょう。

通常、私たちが受託測定を行う際は、
お客様からお預かりした試料が、熱によるダメージを受けないように、
照射する加熱レーザーの出力を、ゆっくりと慎重に上げていくのが基本です。
お客さまからお預かりした試料が、ダメージ(焦げ)跡がないキレイな状態のまま
返却されていくのは、細心の注意を払いながら、測定させていただいているからです。

でもそれだと、「どこを測定したのか、さっぱり分からない!?」 ……ということにもなります。

なので、今回だけは、どのくらいピンポイントに測定しているのかを
視覚的に観察するために、わざと加熱レーザー出力を上げて、熱によるダメージを与え、
測定箇所にレーザー痕をつけながら、分布測定をおこないます。
その後で、レーザー痕の観察をしてみたいと思います。

注:何度も言いますが、試料にダメージを与えるのは、今回の実験測定だけです!
お客様の試料ではやりません。
内緒ですが、私は社内の開発サンプルを測定する時に、
こっそりとバレないように、自分の研究開発用の実験などをやっています。
(こっそりです。……でも、これでバレました… ああ、装置の無断使用ができなくなる…)

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<手順>
1.まず、対象試料に黒化処理を施します。これは放射率を上げるためです。
  (参考)放射とは   http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84


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 図1 左:黒化処理前、右:黒化処理後


2.サーモウェーブアナライザTA3で分布測定をします。


3.試料の黒化膜を除去します。エタノールをかけて、軽く拭きます。


4.いよいよ観察です!
  本邦初公開! 測定後の加熱レーザー痕がくっきり見えています。
 
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 図2 分布測定後、黒化膜を除去した試料

黒いポツポツがあります。これが加熱レーザーの痕です。
細い線のようにも見えますが、実際は「点」です。

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 図3 図2の試料の拡大画像

サンプルは2㎝角の試料ですが、無数にレーザーの痕がついています。
サーモウェーブアナライザTA3を使用すると、
このぐらい細かい間隔で測定できる、ということが分かります。
今回は500μmピッチで測定しましたが、
装置の性能的には、最小250μmピッチまで測定が可能です。


「ピンポイントで測定すると、どんなふうに役立つのか」
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◇金属材料などの均質な試料
  ☑熱物性測定
  どこを測定しても、バラツキの少ない安定した測定が行えます。

◇フィラー含有の複合材・分子配向を制御されている熱的異方性を持つ材料
  ☑熱物性測定
  ☑フィラー分散の均一性チェック
  ☑面内・厚さ方向の異方性の確認
  ☑フィラー(繊維)配向の解析


ベテルのプラスチック成形事業部では、高熱伝導性樹脂の成形方法・条件などの
技術開発に、サーモウェーブアナライザTA3をよく使用しています。
成形品を、熱的な視点で見ることで、色々なことがわかります。


熱物性測定に関することで、他に気になることがございましたら、
わたくし「カトちゃん」またはベテルのヒーロー『熱物戦士☆サーモマン』まで
お問い合わせ下さい!

(著:カトちゃん)