こんにちは。サーモマンです。
ブログには久々の登場になります。

さてさて、
皆さんは、ナノセルロースと言う材料をご存知ですか?
ナノセルロースは、植物繊維をナノサイズまで細かくほぐすことで得られる材料です。
https://youtu.be/eGJq-Yd0m3A

<ナノセルロースの特徴>
◇鋼鉄の5 分の1 の軽さで、5 倍の強度を持つ。
◇自然由来材料なので低価格で環境負荷も小さく、安定供給が容易。
 (生産量や製造方法によってくると思いますが・・・)


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最近、ナノセルロース関連で、
立教大学の研究グループから、すばらしい研究成果が発表されました。

Crystallite Size Effect on Thermal Conductive Properties of Nonwoven Nanocellulose Sheets
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.biomac.5b00617
(Uetani, K. et al., Biomacromolecules 2015, 16, 2220−2227)



まずは、下の写真をご覧ください。

ホヤナノウィスカー

これは、ホヤの外皮由来のホヤナノウィスカーです。

ホヤ!
あの海に生息しているホヤです。

ホヤは植物じゃないじゃんと思った方、
私も思いました。


ホヤはセルロースを合成できる変わった動物だそうです。うーん面白い。
http://www.shimoda.tsukuba.ac.jp/~sasakura/research_cellulose.html




次に、下のグラフをご覧ください。
「ホヤ外皮由来ナノセルロースの不織シート」と「ポリイミドシート」の熱伝導率を示したグラフです。
水平方向と垂直方向の各方向において測定をおこなっています。


ナノセルロース熱伝導率グラフ

※ 上記グラフ中の「ナノセルロース」とは、「ホヤ外皮由来ナノセルロースの不織シート」、
 「ポリイミド」は「ポリイミドシート」を示す。



ホヤ外皮由来ナノセルロースの不織シートの熱伝導率は、
水平方向が 2.5 [W/mK]、垂直方向が 0.3 [W/mK] となりました。
ポリイミドシートと比較しても、2倍以上の高い値が得られています。

また、ナノセルロース不織シートは繊維が垂直方向に積層していますので、
上記の熱伝導率の棒グラフは、構造の異方性を正確に反映していると言えます。



ホヤ以外にも、コットン濾紙・スギ木粉・ナタデココなど、
さまざまな原料からナノセルロースが作製でき、
熱伝導率も測定できました。
これなら、バイオエタノールで起きたような穀物の高騰も心配なさそうです。


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ナノセルロースの応用分野は、
◆自動車部品
◆フレキシブル基板
◆太陽電池
◆EL ディスプレイ  等々。

多分野での活躍が期待されています。


後は、たとえば電子機器のフレキシブル基板に、
熱伝導率の高いナノセルロースでできた不織シートを使うと、
これまでよりも効率的な放熱が可能となります。

最近の電子機器は、実装密度が上がり、
「空気中の放熱」よりも「基板への放熱」が重要になってきております。

これは、時代の要請というわけですね。


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ナノセルロースの熱伝導率測定には、
当社のサーモウェーブアナライザTAをご使用いただきました。
http://www.bethel-thermal.jp/specification/01/index.html


このような素晴らしい材料の測定に、
サーモウェーブアナライザTAを役立てていただき、誠にありがとうございます。
立教大学の研究グループの皆さま、感謝申し上げます。


(著:サーモマン)