こんにちは。
サーモマンです。

最近は、生体由来材料がいろいろと開発されております。
化石燃料由来の材料の将来を考えると、当然の流れですね。
ですから、熱物性も当然必要になってくるわけです。

今回は、以下の2種類の生体由来材料の熱拡散(伝導)率を測定しました。
  1. ポリ乳酸延伸フィルム
  2. セルロース(ろ紙)

◇ ― ◇ ― ◇ ― ◇ ― ◇


まずは、ポリ乳酸延伸フィルムの熱拡散率測定です。

ポリ乳酸延伸フィルムは、トウモロコシなどのデンプン由来の乳酸を重合して作られ、 生体適合性・生分解性を持つバイオプラスチックである。
繊維、フィルム、包装、成形品といった幅広い用途に使用される。

見た目は普通のプラスチックフィルムですね。


ポリニュウサンフィルム
(三菱樹脂WEBサイトより)


一軸に延伸した試料なので、
水平方向と垂直方向の違いだけでなく、延伸による影響もあるはずです。
延伸方向をX方向とし、XYZ3方向の測定をおこないます。

※ 測定に使用したのは「サーモウェーブアナライザTA」
http://www.bethel-thermal.jp/specification/01/index.html


測定結果は・・・


ポリ乳酸延伸フィルムの熱拡散率測定結果
熱拡散率 [×10-6m2s-1] 熱伝導率 [W/mK]
水平方向 垂直方向 水平方向 垂直方向
X軸
(延伸方向)
0.52 0.087 0.72 0.12
Y軸 0.27 0.37



■水平(XY)方向と垂直(Z)方向の比較
 水平方向に熱伝導率が高く、垂直方向に熱伝導率が低くなっています。

■延伸(X)方向とY方向の比較
 水平方向では、Y方向よりも延伸したX方向のほうが熱伝導率が高くなっています。
 これは、延伸により分子がX方向に配向したためと考えられます。


◇ ― ◇ ― ◇ ― ◇ ― ◇


続いて、ろ紙の熱拡散率測定をおこないます。
ご存知の通り、ろ紙はセルロースでできています。

セルロースは、植物細胞の細胞壁および繊維の主成分で、天然の植物質の1/3を占め、地球上で最も多く存在する炭水化物である。繊維素とも呼ばれる。
自然状態においてはヘミセルロースやリグニンと結合して存在するが、綿はそのほとんどがセルロースである。紙・パルプ・衣料用繊維など工業的にも広く利用される。

今後は植物由来材料の熱伝導率が必要とされるでしょう。

セルロースろ紙1 セルロースろ紙2
(アドバンテックWEBサイトより)

水平方向と面内方向とで、熱拡散率測定をおこないました。
こちらも測定には「サーモウェーブアナライザTA」を使用しています。
http://www.bethel-thermal.jp/specification/01/index.html

測定結果は・・・
 
ろ紙(セルロース)の熱拡散率測定結果

熱拡散率 [×10-6m2s-1] 熱伝導率 [W/mK]
水平方向 垂直方向 水平方向 垂直方向
ろ紙
(セルロース)
1.5 0.17 0.88 0.10


熱伝導率は、垂直方向が 0.10 [W/mK] 、水平方向が 0.88 [W/mK] となりました。
水平方向に熱伝導率が高く、垂直方向に熱伝導率が低くなっています。

これは、水平方向にセルロースの繊維が配向しているためと考えられます。

◇ ― ◇ ― ◇ ― ◇ ― ◇


以上、生体由来の材料もそつなく測定できました。

今回の試料および測定結果は、立教大学様にご提供いただきました。
この場を借りて御礼申し上げます。


(著:サーモマン)



お問い合わせフォーム