今年もあとわずかですね。

このブログ、今年最後の締めは
ノグッチャンが担当することになりました。

確か今年最初も私だった気が・・・
何かモッテいるのかもしれません。


さて
今回の実験は
「試料厚みの誤差による熱拡散率への影響」についてです。

この実験は、測定ではなくデータ解析の話になります。
面内方向の解析では、ほとんど影響がありませんが
厚さ方向の解析をする場合、入力した「厚み」が熱拡散率に2乗で効いてきます。

この「厚み」がどの程度ずれると
熱拡散率に影響が出てくるのかを検証したいと思います。

用意したのは、厚み違いの銅(Cu)を3種。
① 銅(Cu)  0.3 [mm]
② 銅(Cu)  0.5 [mm]
③ 銅(Cu)  0.8 [mm]


①の試料の厚みをマイクロメーターで測定すると・・・

測定試料の厚み測定

0.302 [mm] でした。

試料の厚みを測定したら、通常の厚さ方向の熱拡散率測定を行います。

※測定には、サーモウェーブアナライザTAを使用。
http://www.bethel-thermal.jp/specification/01/index.html



測定結果はこちら。

銅の測定結果(試料厚み0.302mm)

銅(Cu)の文献値が117 [×10-6m2s-1] なので、妥当な結果になりました。


これからが本番です。

この測定データを試料厚みを変えて解析すると、
熱拡散率がどう変化するのか、確認していきましょう。


徐々に厚みを変えていき、文献値から10%以上離れた時点で
測定結果に影響ありとします。

文献値より10%低くなった結果がこちら。
銅の熱拡散率解析結果(試料厚み0.286mm)



文献値より10%高くなった結果がこちら。
銅の熱拡散率解析結果(試料厚み0.317mm)



①の0.302mm厚の銅(Cu)で検証した結果、
実際の試料の厚みに対し、解析に使用する厚みが約5%ずれると
熱拡散率に約10%の影響があることが分かりました。


試料厚みの誤差と解析結果 ~銅(Cu) の場合~
試料名 試料厚み 熱拡散率
入力値
[mm]
実際との差
[%]
解析結果
[×10-6m2s-1]
実際との差
[%]
Cu 0.302 117
0.286 ▲5.2 105
▲10.2
0.317
+4.9
129
+10.2
※ 0.302 [mm] は、実際の厚み。



ん~
実験をすると、どうも長くなってしまう・・・
他の試料については省略します。

結論を述べると
②と③の厚み違いの試料も、①と同様に
試料厚みが約5%ずれたところで、熱拡散率に影響が出てきました。
※生データをご覧になりたい方は、ぜひノグッチャンまで♪


銅(Cu)に関して言うと、
――――――――――――――――――――――――
実際の厚みから、約5%ずれた厚みを入力してしまうと
熱拡散率に約10%の影響が出る。
――――――――――――――――――――――――
ということが分かりました。


金属のように「固い材料」であれば、誤差はほぼ無いと思いますが、
「柔らかい材料」や「弾力性のある材料」の場合は、
厚みの計測に十分な注意が必要です。


といった所で今年の実験を終わりにしたいと思います。


皆様
どうぞ来年もよろしくお願いいたします。


(著:ノグッチャン)