生まれも育ちも茨城なのに、
特産物の納豆、メロン、アンコウが、そんなに好きではないアワノッチです。


今、「サーマルマイクロスコープTM3」の装置本体の問い合わせや依頼測定が
例年以上に多く、異常に忙しい状態で、この記事を書いています。

これもアベノミクス効果でしょうか?

サーマルマイクロスコープTM3の問い合わせに対応しているときに
ふと気がついたのですが、
カタログには、装置の説明がびっしり書いてありますが、
お客様は、どのように試料を作成すればよいか全くわかりません。
(気づくのが遅いのですが…)

なので、試料の作成に関しては、毎回、口頭または絵に書いて、
お客様に説明をしているわけです。

そこで今回は、
『サーマルマイクロスコープTM3で熱浸透率を測定する時の、測定試料の作り方』
について、説明していきたいと思います。

まず、サーマルマイクロスコープTM3は、
◇ 薄膜の熱伝導率
◇ 微小サイズ試料の熱浸透率
などを測定する装置です。
http://www.bethel-thermal.jp/specification/02/index.html

測定できる試料は、以下のようなものがあります。
主に小さい領域の測定を得意としています。

画像1


お客様によっては、基板上の薄い膜を全て
『薄膜』 と呼んでいる方もいらっしゃいますが、
TMでは『バルク』と『薄膜』を、以下のように分類しています。

<バルク? 薄膜?>

薄膜と呼ばれる膜の厚さは分野によって異なります。

TMの場合、薄膜やシートの膜厚によってはバルクと考えることができます。
交流温度波が膜の裏面まで到達する場合、基板や試料台の影響を受けるので
“薄膜”として測定します。到達しない場合は “バルク”として測定します。

画像2-図

判断するために、交流温度波が試料内を伝わっていく時に
波形を保ったまま進む距離である熱拡散長を使います。
交流温度波を用いた測定の時、熱拡散長μ[m]は次の式で定義されます。

画像2-式

熱伝導率予想値から熱拡散長を計算し、
念のため膜の厚さが熱拡散長5倍未満のとき薄膜、
そうでない場合はバルクと判断して測定します。

このように基板上にあっても、膜厚が厚ければ『バルク』として測定することができます。
バルクとして測定する方が、薄膜として測定するよりも
価格は安いですし、精度も良いです。


バルク試料の作り方は以下のようになります。
TMでは、レーザーの反射を見て熱物性測定を行いますので、
試料の測定面を鏡面のように研磨する必要があります。
これは、バルクだけでなく、フィラーや薄膜の試料作成時にも必要な作業です。

<バルク試料作成>

① 測定用試料を切り出します。推奨サイズは1cm角、厚さ1mmです。
※あくまで推奨サイズであり、形状には自由度がありますのでお気軽にご相談ください。

画像3-1

② 測定面(推奨サイズの1cm×1cmの面)を、
算術平均粗さRaが0.01以下になるように研磨します。
※お客様の方で研磨できない場合は要相談。

画像3-2


フィラーの試料の作り方は以下のようになります。
フィラーのままだと扱いが難しいため、樹脂に埋め込みます。

<フィラー試料作成>

① エポキシ樹脂にフィラーを包埋します。推奨サイズは1cm角、厚さ1mmです。
※あくまで推奨サイズであり、形状には自由度がありますのでお気軽にご相談ください。

画像4-1

② エポキシ樹脂にフィラーを包埋します。推奨サイズは1cm角、厚さ1mmです。
※あくまで推奨サイズであり、形状には自由度がありますのでお気軽にご相談ください。
※お客様の方で研磨できない場合は要相談。
画像4-2


薄膜の試料の作り方は以下のようになります。
適切な基板を選択する必要があります。
また、成膜した基板だけでなく、成膜していない基板も必要になります。

<薄膜試料作成>

① 基板を2枚用意します。推奨サイズは1cm角、厚さ1mmです。
※あくまで推奨サイズであり、形状には自由度がありますのでお気軽にご相談ください。

熱伝導率の高い薄膜を成膜する場合は、熱伝導率の低い基板を
逆に熱伝導率の低い薄膜を成膜する場合は、熱伝導率の高い基板を
使用してください。

画像5-1

② 基板の測定面(推奨サイズの1cm×1cmの面)を
算術平均粗さRaが0.01以下になるように2枚とも研磨します。

※お客様の方で研磨できない場合は要相談。

画像5-2

③ 1枚の基板に測定対象の薄膜を成膜します。もう1枚の基板は成膜しません。
画像5-3



このブログ記事を、資料にまとめましたので、
欲しい方は電話でお問い合わせください。
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 TEL: 0299-36-0690
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アワノッチが、メールでお送りします。

ただ、この資料はまだまだ未完成です。
もっと、必要な情報を追加し、見やすく整理して、
お客様に配布できれば、と思っています。

(著:アワノッチ)

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