ごぶさたしてます。m(_ _)m
「アワノッチ」です。

前回は、熱電対を使った温度測定の記事
測定誤差を減らすための熱電対接着の4つのポイント』を書きました。
そのためか、温度測定の問い合わせが最近多くなってきています。

という訳で、私の書いた記事が『好評だった』と、勝手に思い込むことにして、
今回からしばらくは、「赤外カメラを使った温度測定」に関して書こうと思います。

測定対象を赤外カメラで撮影するだけで、温度測定ができると思っていませんか?
実は正確に温度を測定することは、非常に難しいのです。

試しに2つの実験をしてみます。

<実験1>
ステンレス製の桶にお湯を入れて、
赤外カメラで撮影し、温度測定をしました。

130610-1
ちなみに、室温27℃、水温90℃程度です。



さて、結果は・・・


下図を見てわかるように、
桶はお湯の熱によって温められているはずなのに、
室温とほとんど変わりません。

これでは、正しく測定できているとは言えません。
また、私の手が映りこんでいます。

130610-2


では、正しく測定するためには、どうすれば良いでしょうか?


<実験2>
桶の一部にグラファイトスプレーを吹き付け、
<実験1>と同じように、桶にお湯を入れて
赤外カメラで撮影して、温度測定をしました。

130610-3


すると、グラファイトスプレーを吹き付けた部分では、
水面の位置がわかるようになり、
桶の温度も、水温とほぼ同じ90℃と測定できました。

130610-4



赤外カメラは「熱放射」(ねつほうしゃ)と呼ばれる電磁波を測定しています。
温度が大きいほど、熱放射は大きくなります。

その熱放射には、放射率という値と深い関わりがあります。
放射率が大きければ大きい程、熱放射は大きくなります。

放射率は、熱放射を発する物体の材質や表面状態によって異なります。
通常、表面がツルツルした金属は放射率は非常に低いです。

[参考]
■熱放射(wiki) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%86%B1%E6%94%BE%E5%B0%84
■反射率(wiki) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%8D%E5%B0%84%E7%8E%87
■放射率(wiki) http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%8E%87


そのため、<実験1>では桶から発せられる熱放射が小さく、
赤外カメラで撮影しても、高温のところと低温のところの差がわかりませんでした。

一方、<実験2>で桶表面にグラファイトスプレーを吹きかけたことにより、
その部分の放射率が大きくなりました。

そのため、桶からの熱放射が大きくなって、
赤外カメラで、高温のところと低温のところの差がわかるようになったのです。


130610-5


今回は、グラファイトスプレーの放射率に合わせて、
温度表示の調整をしているので、
うまく桶の表面温度が測定できました。

温度表示をするためには、測定物の放射率に合わせて、
調整する必要があります。

注意しなくてはいけないのは、放射率だけではありません。

<実験1>で私の手が写っていたように、
測定対象物の周りの物の熱放射が映りこんでしまうと、
その影響によって、正しく測定できないことがあります。

また、測定対象物と赤外カメラの距離が長すぎると、
-------------------------------
◇大気が測定対象物の熱放射を吸収してしまう。
◇測定対象物の熱放射だけでなく、大気の熱放射も含めて測定してしまう。
-------------------------------
というように、測定対象物の熱輻射に影響してきます。

130610-6



注意すべき点はまだまだありますが、
それはまた後日…。


(著:アワノッチ)


熱に関するご相談は、株式会社ベテルへ。
お問い合わせフォームをご利用ください。
http://www.bethel-thermal.jp/contact/index.html