今回は高熱伝導性樹脂の測定事例の紹介です。

高熱伝導性樹脂は最近開発が特にめざましい樹脂材料で、用途としては金属に代わる熱伝導性が必要な部分に使われ始めています。
例えば、LED電球のハウジングやヒートシンク、自動車関係のある特定の金属部品におきかわるなどがあります。

今回測定したサンプルはユニチカ株式会社様の多大なるご協力のもと、外形□30mm 厚さt=1mmの試料を用意し、熱伝導率グレード毎(3種類)に熱分布測定を行い比較してみたものです。
また測定の前に、弊社では金型製作、射出成形工場を持っておりますので、成形時の樹脂流動解析を事前に行い、樹脂の流れ方と熱分布のバラツキを比較してみました。
下記図Aが射出成形時の樹脂流動を時間毎に並べたものです。(左から右にしたがって、成形品が完成していきます。)

樹脂流動状態
図A:樹脂流動状態

当社のサーモウエーブアナライザーTAの分布測定モードで測定してみますと、
下図のような熱分布のバラツキを可視化することができます。
図Bは5Wグレード、図Cは20Wグレード、図Dは50Wグレードの測定結果をそれぞれあらわしています。


5W_位相    20W_位相
図B:5Wグレード熱分布測定結果    図C:20Wグレード熱分布測定結果

50W_位相
図D:50Wグレード熱分布測定結果


今回、3種類の熱伝導グレードを射出成形するにあたり、ほぼ同一条件で射出成形を行いました。
上図B~Dの測定結果から分かることは、各グレード毎で間違いなく熱伝導率(色味)が違うので、それぞれのグレード通りの熱伝導率機能を満たしていることです。
さらに、今回は20Wグレードの材料が特に均一に成形できており、熱伝導率の均一さがもっとも優れています。
対して、50Wグレードの熱伝導率分布は図Dの下側の方を見ていただくと分かる通り、均一さにかけています。
これは熱伝導性樹脂中に含まれるフィラー量などが大きく起因するとともに、先の射出成形時の流動解析状態と重ねてみると、流れ込む樹脂の先端が後から来る樹脂と混ざり合って完成品になる経過と
ほぼ一致することからも理解することができます。

これらのことから分かることは、単に高熱伝導性樹脂を射出成形しても、表向きはしっかりと形状も作れて問題ないように見えますが、実は熱伝導率の分布がバラバラになってしまうということです。
しっかりとした熱分布の解析をし、その情報を金型、成形過程まで遡ってフィードバックすることで、狙い通りの均一な熱伝導率をもった樹脂成形品ができるというわけです。

次回は、今回ご紹介した高熱伝導性樹脂の厚み方向熱拡散率と面内方向熱拡散率の多点測定結果をご紹介する予定です。

当社のサーモウエーブアナライザーTAは、
熱伝導率の異方性がある材料でも、同一ワークで測定できる装置です。
測定依頼は、
株式会社ベテル、下記メールアドレスまでご連絡ください。
k-hatori@bethel.co.jp