本日は傾斜機能材料の測定事例です。

傾斜機能材料は日本発の材料でして、
航空宇宙用の材料として開発が始まったようです。

傾斜機能材料とは名称の通り、
徐々に機能が変化していく材料で、
たとえば金属の被覆材が高温で使用されたときに、
熱応力の集中を緩和するためにこのような構造が利用されます。
現在は、航空宇宙関連だけではなく、
機械工具分野、オプトエレクトロニクス分野、
生体分野など様々な分野で使用されています。

今回ご紹介するのは、
茨城大学工学部で研究されている、
Al3Ti/Fe傾斜機能材料です。
鉄の上にアルミ3チタンを被覆し、
界面は徐々に組成が変化するように熱処理した試料です。
鉄は構造材として優れた材料ですので、
耐熱、耐食性の被覆を施すことで、
応用分野がさらに拡大するのです。

ただし、耐熱、耐食性の被覆でもはがれてしまえば、
意味がありませんが、組成を徐々に変化させることで、
熱応力が加わってもはがれにくくすることが可能です。
構造としては下図のようになります。↓

FGM模式図


このような材料は、
組成分布の評価も重要ですが、
高温で使用することになるため、
熱伝導性の評価も重要になります。
しかしながら、
従来の熱伝導性評価方法では、
組成分布≒熱伝導性分布を持つ材料の測定は困難でした。

当社のサーマルマイクロスコープで測定した結果です。
FGM_13Db

図の縦軸が熱伝導性の高低で、
図の右側が鉄で左側がアルミ3チタンです。
中間の領域で急激に熱伝導性が変化していることがわかります。

別の熱処理を行った結果も示します。
FGM_23Db

こちらは徐々に熱伝導性が変化していることが分かります。
こちらの試料が優れているといえるでしょう。
また、被覆層の熱伝導性が低いことから、
構造材の鉄への温度上昇が抑えられ、
耐熱性が向上することもわかります。

当社の サーマルマイクロスコープTM3は、
薄膜の熱伝導率(100nm~)、
微小領域の熱浸透率(3μm~)の測定ができる装置です。

測定依頼は、
株式会社ベテル、下記メールアドレスまでご連絡ください。
k-hatori@bethel.co.jp