カーボンナノチューブ(CNT)を応用した材料の測定事例をご紹介します。

カーボンナノチューブ(CNT)は円筒形の炭素の結晶です。
細く、軽く、丈夫である。
構造により半導体材料となるなどの優れた特徴を持っています。
また、導電性や吸着性を持つほか理論上、非常に高い熱伝導性を持つといわれています。
さまざまな分野でこのCNTの利用方法が検討されているようで、構造材料としては、アルミニウムの半分の軽さ、鋼鉄の20倍の強度、特に繊維方向の引っ張り強度ではダイヤモンドすら凌駕し、非常にしなやかな弾性力を持つため、将来軌道エレベータ(宇宙エレベータ)を建造するときなどのロープ素材に使うことができるのではないかと期待されているとのことです。(wikipediaより一部抜粋)
実は、ノーベル賞受賞で一躍脚光を浴びたグラフェンよりも前に、発見・開発が進められていた材料なのです。
残念ながら、グラフェンに先を越された格好になってしまっていますが、このCNTにはまだまだ知られざる可能性が秘められていると思います。



今回は、このカーボンナノチューブをゴム系樹脂の中に分散させた材料の
熱拡散率を測定しました。
(某CNT材料メーカー様より無償提供いただいたサンプルです。)

ゴムや樹脂の母材の中に、
セラミックスや金属などのフィラーを入れた材料の場合、
フィラーをなるべく多く入れると熱伝導性が高くなります。
これは、フィラー同士が結合して熱を流すネットワークを作るからです。
しかしながら、フィラーを多く入れすぎると、
柔軟性がなくなってしまい、
たとえばヒートシンクと半導体デバイスの間に入れて、
熱抵抗を減少させようという用途には不向きです。

カーボンナノチューブ(CNT)は細長い構造をしているので、
少量でもフィラー同士のネットワークができやすそうです。
将来的には、柔軟でなおかつ高熱伝導性の材料の開発が期待できます。

今回測定した試料の外観はこのような感じです。↓
CNT入りゴム


熱拡散率は厚み方向で0.24×10^-6m^2s^-1
面内方向で0.60×10^-6m^2s^-1です。

面内方向は厚み方向の2.5倍の熱拡散率です。
また、通常のゴムよりも明らかに高い熱拡散率です。

このような材料は柔らかいため、
接触式の測定では厚みが変化し、
正確な測定値を得るのは難しいでしょう。
また、今回の試料ではカーボンを含んでいたため、
表面処理などは全く不要で測定できました。
(材料をそのまま測定ステージに置くだけでした)

当社のサーモウエーブアナライザーTAは、
非接触測定が可能です。
炭素系の材料は表面処理不要で測定できる場合が、
多数あります。

測定依頼は、
株式会社ベテル、下記メールアドレスまでご連絡ください。
k-hatori@bethel.co.jp